四竜帝の大陸【青の大陸編】
「もう、鼻血は止まったぞ! 我は世界一丈夫なのだ。全く気にすることは無い。泣くな、泣かないでくれ。りこ、りこよ」
「な、泣いてないもの! ひぐっ!」

毛布に潜ってしまった、我のりこ。
我はどう対処して良いのか分からず、側にしゃがみ、取りあえず声をかけ続けた。

「鼻血は貴重な経験だったぞ? 礼を言いたい程にな」

「よだれといい、りこのおかげで我は色々体験させてもらっているぞ!」

「内臓を眼から出したり、本物の涙を出したりして大変だったぞ?」

「先日など臨死体験をさせてもらい、なかなかおもしろかった!」

むむ?
言ってるうちに我自身もよく分からなくなってきたな。
慰めているつもりが、なにやら趣旨がずれてきたような?

『ひぐっ、こんな凄い超絶美形顔なのに鼻血とか涎とかぁああ! 内臓溶けちゃうしぃいい! わ、私のせいでっ。ご、ごめんなさっ! そ、それにぃ』
「り、りこ?」
 
異界の言葉だ。
人型では念話が使えぬので、全く意味不明だぞ!?

『エ、エッチの途中で寝ちゃったから唯子が彼に捨てられたって、美恵子が言ってたものっ! ハクちゃん、捨てないでぇええ!』

お、毛布から顔が出てきたな。
うっ!
やはり泣いてるではないか!!

『うえ~ん! 胸無いから離婚なんて、ひどいよぉ。このおっぱい星人め! エッチなんてしません的な、無駄に綺麗で超怖い顔してるくせにぃいい! どうせ巨乳美女と付き合ってたんでしょう? ううぅ……ぶえぇ~んっ!』

まるでセイフォンで出会った時のように泣きじゃくるりこに、我は自分の胃に穴が開くのを感じつつ。

「りこ、りこ」

竜体の我にりこがしてくれたのを真似て、毛布ごと抱き寄せた。

「泣くな、りこに泣かれると我はとても辛いのだ。心臓も胃も痛むし、身体も内部から崩れそうになる」

我にしてくれたように、膝に乗せ背を撫でてやる。
りこがこうしてくれると、我はとても気が安らいだのでな。

「ほら、あまりに泣くから鼻水が出てるぞ? 顔も真っ赤でアダの実のようだ」
『どっ、どーせ私は、鼻水垂らしたアダモちゃんですよぉ! ぶえうぅううえーんっ!!』
「ひっいぃ……な、泣かないでくれ、頼むから。な、りこ、りこよっ」

我はりこを落ち着かせようとしたのに。
りこはいっそう激しく泣く。

『アダモちゃんの私と大魔王様じゃ、ひぐっ、ぜんぜんつりあわなーい! うわぁああんっハクちゃんの奥さん、首にされちゃう! 嫌よ、慰謝料積まれたって別れてあげないんだから! やだよぅ、別れたくないよぉ』

我の腹にりこはしがみつき。

『結婚式しなくたっていいの、ウエディングドレスもダイヤの指輪も無くていいから! うえっ……ひっく。ハクちゃんがいてくれれば、ハクちゃんだけで』

今度は悲しげにしくしく泣きはじめ……。

あぁ。
我も泣きたくなってきた。

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