四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ハクちゃんは外で済ましてるとか?」

竜だもんね。
確かに、便座サイズが合わない。
っていうか、竜なんだから人間とは生活様式が違って当然。
竜は外で自由(?)にしてそう。

「済ます?」
「トイレ。はっきり言えば排泄行為かな」

こんな単語を躊躇い無く口にする私って……女子高生なら、恥らってもじもじすべき場面だったはず。
しかし、そんな事を恥らってたらやってられない。

漏らしたら、本末転倒!
漏らすとか言っちゃうような性格も、彼氏が出来なかった一因かも。

「我は動物と違って糞尿は作らない」
「糞尿……」

上には上がいる。
はっきり糞尿って仰いますかっ。

「案ずるな、りこ。これを使え」

渡されたのは銀色のハンドベル。
ベッド脇の小さなテーブルに置いてあったやつね、これ。

「鳴らせば侍女が来る。部屋の担当は対になる鈴を持っているから、すぐに現れる」
「へー。仕組みは私にはさっぱり分からないけど、便利ね!」

私の“分かんないけど、まあいいや”は話をちゃんと聞きましょうに次ぐ欠点らしく、家族・友人・教師にさんざん注意されてきた。
治る兆しゼロで現在に至るけど。

ハンドベルを振ってみた。
イメージは商店街福引コーナーで、当りが出た感じ。
振ってからしまったと感じた。
お姫様が呼び鈴を鳴らす……あのイメージにするべきだった!
これは呼び鈴よ! 
ハンドベルじゃ無~いっ!!
ん?

「ねえ、音がしなかったよ。壊れてるのかな?」

ハンドベル、ではなく呼び鈴は鳴らなかった。

「鳴るのは侍女の鈴だ」
「ふ~ん」

まだトイレは我慢出来る状態だったから、侍女さんを待つことにした。
洗面・お風呂の使用方法も知りたい。
その後、昨日の人達に会わせてもらい説明を……。

「……りこ。もっと奥に」

ベットに並んで腰掛けてたハクちゃんが、ふわりと浮きながら言った。
金の眼を細めて扉を見てる……睨んでる。
私はスリッパを脱ぎ、ベットに上がって隅に移動した。

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