四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんが私の側から居なくなって、本当はちょっと寂しい。
でも。
名前を呼べばすぐに来てくれるって分かってるから、不安感はあまり無い。

「なんか、この1週間は激動の1週間だったな。昨日もいろいろあったし」

支店でプロポーズ直後にキスどころか最後までして、私の眼が金色になっちゃって。
ハクちゃんのかけらを美味しく食べちゃったり、旦那様の鼻血でべろんべろんに酔ったり。
ん? 
なんか人間離れしてきたかも……。

「ま、いいか! 人間じゃないハクちゃんと結婚したんだし。……黒の竜帝さんは、ハクちゃんになんの話があるんだろう? 青の竜帝さんの件で怒られる事は無いって、ハクちゃんは言ってたけど」

なぜなら。
ハクちゃん曰く。
黒の竜帝さんは青の竜帝さんとは、先代から犬猿の仲らしいのだ。
竜帝さん同士もいろいろ複雑な事情があるんだろうけど。
小さな竜が全員揃って仲良く遊ぶ姿を見るのは、無理ってことだね……残念。

「それと、電鏡って道具に興味あるんだよね。今度、詳しく教えてもらおうっと」

遠く離れた場所にいる黒の竜帝さんとのお話は、大陸間通話用の特殊な電鏡を使うのだと教えてもらった。
性能が高い分とても大きいので、専用の部屋に備え付けられていて、その部屋が電鏡の間と呼ばれてて……つまり、遠距離通話会議室?

「他の大陸も、いつかは行けるのかな? でも飛行機ないから駕籠? 海を渡るのは大変そうだし、お客さんが少ししか乗れないから船……大型客船?」

この世界の交通機関について、そのうち調べてみよう。
ハクちゃんは泳いで大陸間を往復可能らしいけど、私には無理だし……。
ふと。

「……」

思い出したくないことを、思い出してしまった。
朝食後、お皿を洗う私を人型になったハクちゃんが‘お手伝い’してくださった。
ふりふりエプロンに花柄のゴム手袋をした私を、あのダークサイド感満載の格好でお手伝いして下さいました。
詰襟の黒一色の長衣に、一般人には絶対着こなせないゾローッと長く重厚な外套。
垂直に立った襟は金糸で縁取られ、生地は厚めで金属のような光沢。
黒ずくめなのに、地味さゼロ。
ある意味、ド派手。
このまま世界征服に出勤できますよって感じ。
悪の帝王様なハクちゃんに、がしっと掴まれての皿洗い……。
食器が1人分だからすぐに終わって、良かった。
やっぱり、帰りに駕籠に寄ってもらおう!
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