四竜帝の大陸【青の大陸編】
「竜帝さんの薬草園を見せてもらおうっと!」

見慣れぬ花々が咲く庭園は、お城の北棟の隅に位置している。
あのおちびな青い竜、竜帝さんが趣味と実益を兼ねて管理している場所だった。
ハクちゃんが言うには、ここの薬草園で植えられてるのは薬効成分のある植物ばかりで、1年中野外で栽培できるように品種改良している場所らしいのです。
これも竜帝さんの発案で、彼の計画では将来的に莫大な利益になる予定。
お城の建物からはちょっと離れてるけれど、この薬草園は基本的に竜帝さん以外立ち入り禁止で誰もこない。

「一般公開されてない場所ってことよね? ふふっ、得しちゃった」

だから、彼はここを選んだようだった。
もちろん、私が花や植物を見るのが好きだってことを考慮してくれたんだけど。
私はハクちゃんに、そんな話をした事はなかった。
でも、ハクちゃんは気づいてくれていた。

「私のこと、よく見ててくれたって事よね……」

すごく、嬉しい。
おしゃれな街で過ごすより、公園や植物園が好きだった。
温かい缶コーヒーを飲みながら、ぼーっとしたり。
気に入ったものはデジカメで撮ったり。
今の私の手には、愛用のデジカメは無い。
だから、よく見るようになった。
私の不出来な脳を駆使し、記憶させようと努力するようになった。

「ありがとう、ハク」

携帯やデジカメを失って。
私はちょっと、変わった気がする。




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