四竜帝の大陸【青の大陸編】
「お、おちび! これはその、このじじいはっ、感性がだなっ!」

ハクちゃんの下で美女が……竜帝さんが何か言ってるけれど、私は頭ががんがんとして聞きとれなかった。

「りこ、どうしたのだ? うむ、分かった! <青>がりこの邪魔をしたから、怒ってるのだな?」
「違うよ! 私……ハクちゃんの馬鹿!」
「<青>のせいではないのか? りこ、りこよ。では、何を怒っているのだ? うむ、我が悪かったのか? 我が、悪いのだな。理由は全く分からんのだが、我が悪いに決まっておる! りこ、許してくれ。な、涙が出そうだぞ? 泣くな、泣かないでくれ」

なんで分かんないなんて、言うのよ!?
ハクちゃんは瞬き1つに間に竜体になると、竜帝さんから降りて私のスカートの裾を小さな手で握り締めた。
大きな瞳で、彼は私を見上げる。

「我は怒られるような事を、りこを悲しませるような事をしたのだな? いったい……」

その眼は黄金。
私達を結ぶ色。

「理由? そんなの……ハクちゃんが竜帝さんに、キスしたからに決まってるじゃない!」

ハクちゃんの眼を見て言った私に、彼は首を傾げた。

「キス? 噛み付いただけだぞ?」

そして、そう答えた。

「なっ!?」

その言葉に、私は言葉を失う。
噛み付いたぁあああですってぇええ~!?

「手がふさがっていたから、口で黙らせただけだ。我が<青>などに、接吻するはずなかろう?」

してたじゃないのっ!

「我が、我から接吻したのは今までりこだけだ。もちろん、これからもな」

え?
あれ、えっと?
混乱する私に、よっこらせっとあぐらをかいた青い髪の美女が言う。

「おちび。じじいは、こういうとこ、昔からちょっと変なんだよ。俺らとは、感性が違うっつーか、ずれてるというか」

竜帝さん……。

「このじじいは、どっかいかれてんだよ。……おちびみたいなまともなお嬢ちゃんには、理解しがたいだろうが。さっきのはヴェルにとっちゃ、蹴りや殴るのと変わんないんだ。おちびが見てるからこそ、怪我した俺様をぼこったらまずいと思って手法を変えただけだ」
「……さっきのは、どう見てもキスでしょ?」

しかも、身体に触ってた。

「じじいにとっちゃ、本当に噛み付いた程度のことだ。キスなんて、これっぽちも思っちゃいねえって。節操なしのじじいだが、男とは絶対やんないしな」

男。

男ぉおおおーっ!!
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