四竜帝の大陸【青の大陸編】

56

ハクちゃんは、私を温室に連れ帰ってくれた。
竜帝さんも一緒に……。

美女にしか見えない竜帝さんは温室中央の池の淵に腰掛け、ガウンのポケットから鏡のような物を取り出して指先でトントンと数回叩き言った。

「カイユ、カイユ! あぁ、避難命令解除だ。それと、南棟に来るとき俺様の服を持ってきてくれ。鎮痛剤はいらねえ、あれは動きが鈍るからな。で、ダルフェは? 餓鬼共んとこか? ……分かった、じじいには俺が伝えとく」

あ、もしかして。
あれが電鏡?
カイユさんと喋って……。

「……」

竜帝さんは、本当に綺麗。
さすがに胸は無いようだけど、ハクちゃんやダルフェさんよりずっと華奢だし女顔。
ああして腰掛けてると、まさに女神様というか……。

「りこ」

竜帝さんに見蕩れていた私の裾を、ハクちゃんが軽く引っ張った。

「我は<青>がりこに2ミテ以上近寄ればあれの眼を抉ると、前もって忠告してある。が、りこからも、あれには必要以上に寄らないでくれ。でないと我は……今の我は、反射的に<青>の首を落とす可能性がある。りこの前でそのようなことは、したくないのだ。我はりこに……怖がられたくない、嫌われたくない」

なっ……首を落とす!?

「ハクちゃん、なんでそんなっ」

ハクちゃんは小さな両手で裾を握り締め、言った。

「今の我は……常より押さえがきかんのだ。りこ、悪いが1人で風呂に入ってきてくれるか?」
「え? お風呂って……あ!」

そうだ、他の人の匂い。
服も、おじさんに掴まれた場所が汚れてるし……。

「他の男の匂いが、我の理性を引き裂き弱くする! 出来ることならこの手で、りこを隅々まで徹底的に洗い清め……我の匂いを、深く濃く染み込ませたい! ああ、その身体の奥の奥まで、我を……!」

私を見上げる金の眼は、きらきらを通り越してぎらぎらしてきて。
スカートを掴んでる手が、ぶるぶる震え……。
ちょ、ちょっとハクちゃん?
なんか様子がっ。
しかも何気に、凄いこと言ってるんじゃないの?
人型で言われてたら、流石に引くような過激な内容じゃありませんでした?

「おい、おちび。じじいの理性がきいてる間に、風呂に入って来い! とっとと余計な匂いを処理しねえと、ヴェルにとんでもない目に合わされんぜ? 」

ハクちゃんの異変に気づいた竜帝さんが、私を追い払うかのようにしっしと手を振った。
ひえっ~!

「わ、わかりました! 今すぐ、入ってきます!」



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