四竜帝の大陸【青の大陸編】
『うっわー! 綺麗! 今夜はお月様が隠れてるから、星が良く見えるね』

中庭の中央近くに小ぶりな敷物(りこが庭でまどろむ時に使用している)をしき、寝転がって夜空を見上げた。

『まるで天の川……本物は見たこと無いけど。こんな感じだよね、きっと。……七夕とかって、こっちもあるのかな~』

我が見惚れるのは、夜空ではなく。
りこだ。
りこの黒い瞳の中に、無数の星が輝いていて。
それはあまりに綺麗で、幻想的で。

=……。

もっと近くで見たくて。
我はりこの顔を覗き込んだ。
ああ、りこの美しい瞳から零れる涙なら。
天に昇り、星になっても不思議は無い。
それほどに、美しい。
綺麗で甘い、りこの涙なら。
天で輝き宙で煌めく星になるだろう。

『……ハクちゃん。ごめん、ちょっと近いよ。空が見えないよ』

むっ、りこの瞳に吸い込まれ。
つい、無意識に身体が……。

==すまぬ、あまりにりこの眼が美しかったのでな。

正直に言うと。

『ハクちゃんって、情緒無いんだかあるんだか……。まあ、審美眼はずれてるよね』

そう言い、笑った頬がほんのり赤くて。
間近でそれを見た我の心臓は。
まるで、直に握られたほどの衝撃で。
“ぎゅぎゅーっ”となってしまう。

==わ、我はそのっ! り、りこをあい……あ、七夕とはなんなのだ!?

い、いかんぞ、我よ!
思わず求婚してしまうところであった!
まだ、我に‘結婚’は早いのだ。
未だラパンの実を潰してしまう我には、りこと巧く交尾する自信が全く無いのでな。
愛しいりこを傷つけるくらいなら……ずっと交われなくても良い。
側に居てくれるなら、我は愛玩動物でも良いのだ。
どんな形であれ、りこが我の側に……それだけで。

『七夕? えっと、あっちの世界の行事というか伝説というか……話していいの?』

りこは少し困ったような顔をした。
りこにこのような顔をさせてしまう、自分の弱さが憎い。
我はりこと出会ってから、自分が嫌いになった。

世界最強の力があっても、りこの役にはたてなくて。
りこの心の動きを察して行動することも出来なくて。

我は愚かで、愛する女の前では無力なのだと思い知った。

==うむ。我に、教えて欲しい。

甘えてばかりの、我だが。

心の底から、全てをかけて。
貴女を愛している。


 


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