四竜帝の大陸【青の大陸編】

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お風呂から出て、温室に戻って数分でカイユさんがやって来た。

「カイユ!」

アオザイに良く似たデザインの服は薄いブルーで、とても素敵。
儚げで清楚な雰囲気の彼女の美しさが、ますます引き立って。
艶やかな牡丹のような美人である竜帝さんと対照的な、睡蓮の花のような美しさ。
ハクちゃんを抱っこしたまま、私はカイユさんに駆け寄った。
会えなかった時間は丸1日……けれど、久しぶりに会えた感じがした。

「カイユ、お仕事は? あっ! 竜帝さんを迎えに来たの?」

細い腕でロッカータンスに車輪が付いたような大きな物を、軽々と押している。
相変わらず、見た目から想像不可能な怪力です。
カイユさんは私の好きな、透明感のある微笑を浮かべた。

「私は溶液調整を担当していたので……溶液から出た後の陛下の面倒は、医療班にまかせます。トリィ様、カイユがお側にありますからご安心下さいませ。気の利かない雄共ばかりで、お困りだったでしょう?」

カイユさんが居ない間?
ま、まさか……ダルフェさんとハクちゃんの事?

「え、いいえ! 大丈夫です。ダルフェもハクちゃんも、良くしてくれます」

カイユさんは私の乾いていない髪に手を伸ばし、指先で触れた。

「そうですか……さ、お部屋で御髪を結いましょうね。トリィ様に似合いそうな飾り紐を、幾つか持ってきましたの。生花もありますよ? 綺麗に飾ってヴェルヴァイド様にも見てもらいましょうね? ……陛下、この中に衣服が入ってますから適当にどうぞ」

え?
適当にって……それはまずいんじゃありませんか!?
竜帝さんは怪我してるんだから、着替えを介助してあげなきゃっ!
あんなに包帯だらけじゃ、身体が動きにくそうだしっ。

「カイユ。私のことより、竜帝さんを助けてあげて。あ、私も手伝いますっ」

私の意見は本人により、速攻却下されてしまった。

「いらねぇって! 俺様に止めを刺す気かよっ!? カイユ、おちびをさっさと連れて行け。俺は自分でなんとかす……」
 
 
「我が<青>に手を貸そう」


「え?」
「はい?」
「へ?」

一瞬。
誰もが幻聴かと……。

「我は<青>とこの場に残る。カイユ、我が妻には生花が似合う。そうだな……我の鱗に似た色の花が良い」

幻聴じゃない!?
この念話はハクちゃんだっ!



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