四竜帝の大陸【青の大陸編】
「なぁ、おちび。飯の時は、いつもこうなのかよ? お前も災難だよな~、ま、勘弁してやってくれよ。じじいは古代種系だから、雌への給餌行動に執着すんのもしょうがないっつーか……」

竜帝さんは青い眼を細め、言った。
んー?
聞いたことの無い単語が混じっていたから、よく分からない。

「?」

首をかしげた私に、竜帝さんは……。

「これは古~い求愛行動のひとつなんだ。ま、今時こんなことする竜族はめったにいねぇけど。俺様も初めて見たな~。ええっと、つまりだ! じじいは飯の度におちびに求愛……交尾させて下さいって、お願いしてるようなもんだ。超俺様節操無し自己中鬼サドじじいに、そこまでさせるとは。すげえな、おちび!」
「きゅっ、求愛……こ、こ、こう?!」

交尾!?
交尾って……うわっ!?
 
私はテーブルの上でスプーンを差し出している小さな旦那様を、凝視してしまった。
確か……カイユさん達の前だけじゃなく、支店の子供達の前でも“あ~ん”をしちゃった!
ひいぃぃ~っ、なんてことを!

「へ~、そうなんすかぁ。知らなかったなぁ、俺。単に旦那の趣味なのかと……ハニーは知ってた?」
「ええ。トリィ様……実は私の父が、その古い性質が強く出た珍しい個体だったんです。でも、ほとんどの者は知らないと思います。博識なバイロイトは、すぐに察したようですが」

カイユさんは大皿に盛られたサラダを竜帝さんのお皿に取り分けながら、言った。

「野菜もお食べ下さい、陛下。トリィ様、陛下の言葉は大げさですわ。ヴェルヴァイド様の行動は求愛というより愛情表現のような、可愛らしいものです。父の給餌行為による求愛は、見るに耐えない様でしたから。ヴェルヴァイド様はきちんとカトラリーを使用なさいますが、父は口移しでの給餌を強要して最悪でしたわ。普通の竜だった母は、竜騎士の父に力で抵抗することは敵わず。いつもいつも、家中逃げ回って……あの2人が居ると落ち着いて食事をとることは、全く出来ませんでした」 

うわ~、それは凄いというか大変というか。
ハクちゃんはそこまではしないもの、良かった……。
上には上がいるんですね。
カイユさんのご両親……いつか会ってみたいな。
私は娘さんに、お世話になり通しなんですってご挨拶を……。

「あのセレスティスが? 俺様には、想像出来ねえな~。ミルミラも大変だったんだな。……その異常な家庭環境が、カイユの性格をここまで凶悪凶暴にし……ぼぐぎゃっ?!」

竜帝さんの口に。

「ぼぎゃぐきょぉおぉ!?」

メロンが、メロンが丸ごと突っ込まれっ!?

「ほほ、陛下ったら……食物繊維を補うために、皮付きで食べたいなんて! しょうがないですわねぇ」

カイユさんはにっこりしながら。

「さぁ、陛下。どうぞお食べになって」

メロンを竜帝さんの口の奥へと、さらに押し込んだ。

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