四竜帝の大陸【青の大陸編】
焼きたてのパン。
新鮮な野菜、果物。
焼いた玉子は白と黄色のコントラスト。
そして、優しい香りのスープ。
茶は鮮やかな紅色……南方産最高級茶葉だな。
黄の竜帝も好んで飲んでいた。
ああ。
どうあがいても、どんな高名な料理人を使っても我の肉ではこのようにはならん!
我の肉よ、完敗だ!
 
『さぁ、もうトリィ様が出てくるわ。そこどいてくださいな』

扉に張り付いていた我を豪腕で引き剥がし、女は静かに扉を開けた。

『お疲れ様でした、トリィ様。ああ、“私が選んだ”お洋服がとてもお似合いだわ。……さっさと通訳してくださらない? ヴェルヴァイド様』

我は少しばかり惚けていた。
現れたりこは……。

「りこ、りこ! とても綺麗だ」

白く光沢のある生地に金糸の刺繍。刺繍は裾・袖・詰襟に丹念に施され、派手すぎず品が良い。白はりこの真っ黒な髪をいっそう引き立てた。
髪に飾られた生花も白。
八重咲きのフィスカは、この国が誇る貴重な植物だ。

「え~。ちょっとやり過ぎじゃない? お姫様じゃないんだから。普段着を貸して欲しかったんだけどっ……」

そう言いつつも……りこは照れた様に笑った。
頬がほんのり赤くなっていた。

豪華な服やフィスカの花が無く、今まで着ていた異界のパジャマという衣装で現れても我は同じように感じ思うだろう。
たとえ泥にまみれていようが、涙でぐちゃぐちゃだろうが。

「りこは綺麗だ」

綺麗だ。
我にとっては、誰よりも綺麗な女だ。

りこがりこでなくなっても。

「とても、綺麗だ」


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