四竜帝の大陸【青の大陸編】
帝都に到着してから、あれは城から一歩も出ていないはずだが……。
カイユはりこに必要なので、常に城に居るように命じてあった。
気配も常に城内にあったぞ? 

「どういうことだ、ダルフェ」

我の問いに、ダルフェは苦笑した。
 
「さすが【団長】ですよ。陛下が姫さんの後見人の件を諸国に告知すると同時に、帝都に間者共が押しかけるだろうって、親父殿を市街に配置してたんです。……やっぱ、母親は強いですねぇ。陛下も俺も……旦那すら出し抜いて行動を起こしてたってわけです」

なるほどな。
りこに対し誓約をするだけのことはある。
カイユが何故、異界人のりこにそこまでするのか、我にも分からぬが……。

「カイユは自分の父親を使ったのか」
「ええ。親父殿が間者共の居場所から何から全て把握済みで、あの人の指示通りにパス達は狩りを行ってます。あの親父殿が出てきたんなら俺の出る幕なんぞ、ありませんよ。……なんたって前団長ですからねぇ」

我はカイユの父親と面識は無いが、ダルフェがそこまで言う相手なら大丈夫だろう。
ダルフェは<赤>に似て、個体の能力を的確に判断できる。
近年、益々似てきたな。
血が繋がっているからか?
まあ、そんな事はどうでもいいことだ。
猟犬共の狩りは、問題無いようだ。
ならば……我は、ペルドリヌに行くとしよう。
この蛆を伴ってな。

「ダルフェよ、お前は知っているか? ペルドリヌが崇める異端の神を」

額に掛かった赤い髪を鬱陶しげにかき上げ、吐き捨てるようにダルフェは言った。

「あ? 興味無かったんで、あの国のことはほとんど知りませんよ。どうせ、ろくでもないモノを神だとか言ってんでしょう? 異端の神? って……まさかっ?!」

見開かれた緑の瞳に映るのは、我。
<監視者>でありながら、時代や地域によっては魔王や悪魔とされてきた人型の我。

「異端の神……ペルドリヌは魔神信仰の教団が興した国だ」

奴等の崇める魔神とは。

「自ら崇める神に、滅ぼされるならば」

我が神?
あまりに馬鹿馬鹿しくて、放っておいたのだが。

「奴等も本望なのではないか?」

神になど、なりたいとは思わない。

「我は、神などではない。……<ハク>だ」


なりたいものは、ただ1つ。


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