四竜帝の大陸【青の大陸編】
その眼の中に、りこの好む微笑を浮かべた<ハク>が居た。
りこの頬がほわりと染まり、はにかむような笑顔が浮かぶ。

「お、おはよう、ハクちゃん。 ……きゃぁっ! どうしたの?」

髪から水を滴らせ、葡萄酒色の絨毯に染みを作る我を見たりこはあたふたと寝具をどかし、寝台から出ようと動いた。

「ハクちゃん、びしょびしょじゃない! 風邪ひいちゃう……雨?」
 
雨音で外の様子に気づいたりこは、窓に視線を向けた。

「ハクちゃん、雨に降られちゃったの? そっか、雨になっちゃったんだ……残念だけど、夕焼けはまた今度にしようね。私、タオルを取ってくるから、ちょっと待ってて」

「行くな、りこ」

我はりこの腕をとり、細い腰を捕まえるとそのまま寝台へと引き戻し、頬に口付けた。
おはようの接吻だけして、‘ふきふき’してもらうつもりだったのに。

「ハ……ハクちゃん?」

触れてしまったら、そんなことは吹き飛んでしまった。
カイユが着替えさせたのだろう。
すべるような手触りをした薄い夜着に包まれた身体を、壊さぬように抱きしめた。

「りこ、我のりこ」

柔らかな身体に手を這わせ、常より早い鼓動を刻む胸に顔を埋め……懇願する。

「我は、貴女が欲しい」
 
小鳥のような貴女。
翼を折って、飛べぬようにしてしまおう。
鳥籠から逃がさぬように、雁字搦めに縛ってしまおう。

「鳥居りこ」

穢れたこの身体を貴女の綺麗なそれと、交ぜてしまおう。
交ぜ合わせ、1つにしよう。

我から、離れられぬように。
 
「共に濡れ、堕ちてくれ」

どこまでも、共に。

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