四竜帝の大陸【青の大陸編】
竜体での交尾は不可能だ。
言ってみただけで、実際には有り得ない。

ーーすまん、りこ。実は竜体では交われぬのだ。
ーーえ? ……そうなの?

りこをがっかりさせてしまったな。
期待に添えない、不甲斐無い夫を許してくれ。
その分、人型で頑張るのでな。
ん?
そういえば。

「クロムウェルよ。お前は<青>の竜体にも欲情しておったが、どう扱うつもりだったのだ? 参考までに教えろ。実演するなら<青>を使え。我が許可する」

<青>を差し出した我に、変態術士は言った。

「私がするんじゃないです。道具……とりあえず鞭を部屋から取ってきます。陛下は他に何か希望がありますか? なんなりと、仰ってください」

道具?
鞭……はて?
全く想像ができん。
が、こやつは我の参考にならん気がする。

「て、てめえら! ふざけたこと言ってんな、腐った会話は止めてくれ~! じじいっ、さっさと連れてけよ。いかにも事後ですってままのヴェルを寄越したんだからな。よっぽどの事なんだろうし……何があったんだよ? ってか、てめぇ~、おちびに嫌がられるような変なことしたんじゃねぇのか? じじいの下半身についての苦情なら、勘弁してほしいんだけどなぁ。いくら竜帝だって、どうすることもできないからな」

そうだった。
りこの‘お願い’は<青>を連れて来ることだったな。
変態と会話している場合ではないのだ。

「おい、術式を解けクロムウェル! このじじいは、お前にどうこうできる相手じゃない。反対に跳ね返ってお前が怪我するだけだ。自分でもわかってんだろう? ……下がれ、術士クロムウェル。俺の命令がきけぬならお前は首だ。帝都から出て行け」

表情を消し、感情を抑えた<竜帝>の顔で<青>は言った。
クロムウェルは<青>の髪を一房手に取り口付け、深々と頭を垂れた後。

「<監視者>殿。ふしだら極まりない貴方に育てられたのに、陛下はなぜこのように真面目でまともなんでしょうか?」

我に茶の眼を向け、不満を隠さぬ声音で言った。
確かに、他の四竜帝と比べると<青>は‘真面目でまとも’だが。

「我は、これを育てとらん」

我は<青>を育ててなどいない。

ただ‘居た’だけだ。

「俺、育てられてねぇし!」

本人もそう言っておるぞ?
お前は面白いことを言うな、クロムウェルよ。

「……自覚が無いって、恐ろしいですね。陛下、私は食堂に行って夜食を用意してきます。なるべく早めに帰ってきて下さい。新婚夫婦の所に長居するものではありません」

変態は、そう言って笑った。
笑うと目元の皺が、深まった。




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