四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんにお手伝いしてもらいながら、食器を洗った。
私は踏み台の事を、すっかり忘れていた。
それどころじゃなかったし。
今日は、本当に大変な1日だった。
 
踏み台。
無くて良かった。

今の私には踏み台じゃなく、ハクちゃんの大きな手の方が必要なのだから。
私の身体をしっかりと支えてくれるこの手が、私の心まで支えてくれている。
ダルフェさんは片付けながら料理を仕上げる人だから、洗い物は茶器とかが数点だけだった。

「……2週間位で帰ってくるって、言ってたね」

結婚祝いの食事会は、とても楽しかった。
チャペルで結婚式をしなくても、ホテルで披露宴をしなくても。
婚姻届けを役所に出さなくても。
異世界人の私は妻で、竜族のハクちゃんは夫。
私とハクちゃんは夫婦として、認められてる。
すごく、嬉しかった。

「出産は竜体でする。産後暫くは身体が不安定なので、人型になれぬのだ。現代は生活様式が人型に合わせてある。竜のままでは日常生活に支障が出るからな」

カイユさんの竜体。
きっと、とても綺麗なんだろうな。

「そうなんだ。だからお城から出るんだね……」

いつもは全部飲んで空になっているカップには、飲みかけのお茶が半分以上残っていた。
食器を洗いながら、さっき竜帝さんが言っていたことをもう1度、頭の中で考えた。
赤ちゃんは、本来は双子で……男の子と、女の子だったのだと竜帝さんは言った。
竜族は一組の夫婦(つがい)に、子供は一人。
双子どころか、竜族は兄弟姉妹もできない……普通は。
ダルフェさんがずっと双子だと思っていたのは、彼が珍しい<色持ち>の竜だったから。

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