四竜帝の大陸【青の大陸編】
「カイユは出産に適した場所に移る……そういう決まりなんだ。大丈夫、竜族は安産が多いんだ! おい、おちび。ただでさえ地味なんだから、そんなしょぼくれた顔をすんなって!」

竜帝さんの笑みは乱暴な言葉と反対に穏やかで、柔らかだった。
見た目は私より若いけど、この人は私なんかよりずっと大人で……優しい人。

「俺様も……ずっと、不思議だったんだ。母親を人間に殺されたカイユは人間嫌いなのに、なんだっておちびには……いくら妊娠中で母性が強まるからって、変だった。カイユのおちびへの接し方を見て、俺様はお前がまだ成人前なのかと思ったんだ。餓鬼にしちゃ老けてたけど、そのっ、異界人だからそういうのもありなのかって」

カイユさんのお母さんは、人間に殺されていた。
友人だと思っていた人間に裏切られ、惨い殺され方を……。
だからカイユさんは人間が嫌い、大嫌いなんだと竜帝さんは言った。
 
カイユさんとダルフェさんについての話しを終えると、竜帝さんは青く長い髪をポケットから取り出した紐で手早く結んだ。
まとめきれず残った髪が肩に流れ、なんだか色っぽかった。

向かいのソファーに座った竜帝さんは、私の膝枕で寝てしまったかのように動かなくなったハクちゃんを見ながら言った。

「明日は降水確率ゼロだ」
 



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