四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこ?」

あ……いけない!
今は他に考えなきゃならない事が。
黒の大陸にお引越しする……ん?
今、移動しなくてもいいとか言ってた?
あれ?
 
「でも、<約束>なんでしょう?」

ハクちゃんは私を抱いたまま、ぽすんとそのまま後ろに倒れた。
真珠の色の長い髪が、寝具にふわりと広がる……。
ハクちゃんの髪の毛って、本当に綺麗だと思うけれど。
あんなに長いんじゃ、洗うのは大変そう……人型でお風呂に入ったら、湯船に髪が入らないようにタオルを巻くか結んでアップにしないと邪魔かも。
ふと、脳内に浮かんだのは。
○×温泉旅館とプリントされたタオルを頭にまいて、某アヒル隊長と露天風呂に入るハクちゃんの姿だった。

「<約束>……まあ、そうとも言えるか。どちらかというと、<取り引き>が近い気がするのだが。遥か昔、我は竜の始祖と<取り引き>をした。それが盟約……<約束>となり今日まで続いているが、厳守する必要は無い。<約束>の履行を必要としているのは我ではなく、四竜帝なのだ」

ハクちゃん、私と竜帝さんの会話をちゃんと聞いてたのね……。

「我は考えもしなかった……りこの気持ちを。りこが何処に居たいのか、どうしたいのか。そして黒の大陸がりこに合うかなど、そのような事を思いつきもしなった」

ハクちゃんの手が、私の顔にそっと添えられた。
ひんやりとした、大きな手。

「我はランズゲルグのように、りこの事を考えることが……出来なかった」

私の大好きな、優しい手。

「<青>が言ったように、黒の大陸は四大陸の中で最も争いが多い。人間共は絶えず戦をし、それがあの大陸の科学技術を発展させ経済を潤している。りこが産まれ、育った世界は平和で穏やかな世界なのだろう? りこを見れば、我にも想像がつく」

戦争と経済。
こっちの世界も私の世界も、そこは同じなのね……。

「りこは嫌なものを目にするかもしれない、悲しい思いをするかもしれない。人間同士の殺し合いはどの大陸だろうとある。だが、あそこは……りこ?」

私はハクちゃんの目元に触れた。
金の眼。
この綺麗な眼には、私はどう見えているんだろう?

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