四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハロウィンのランタン作りは、私自身も初めてだった。
家で飾ってるのはプラスチック製で乾電池式だったし……第一、アメリカのハロウィンで使うようなかぼちゃは売っていても、高くて手がでなかった。
かぼちゃに数千円出す気には、とてもなれない。
でも、いつかはジャック・オー・ランタンに挑戦したいと考えていた。
だから今日の私は、うっきうき~なのだ。
底を切り取って中身をかき出し、かぼちゃに目と口を書いて切り取れば良し……楽勝だって考えていた。

なめてました、ごめんなさい。
こんなに大変だと思わなかったんです!

「うう~。な、何よこれ……岩石かぼちゃ?」

硬い。
とてつもなく、皮が硬かった。
私の知ってるかぼちゃと全く違った。
ナイフを刺すことすら出来なかった。
野菜の硬さじゃないよ、これ。
無理したら、ぺティナイフの刃が折れそう。
でも、このかぼちゃは食堂のメニューにも良く使われてる。
つまり、調理が出来てるってことだから……。
コツの問題?

胡坐をかいた竜帝さんは足の間にかぼちゃを置き、難なく作業を進めている。
私が不器用なだけ?
でも、でもね!?
かぼちゃの煮物は得意なのよ~!

「煮物……まあ、あんまり関係無いけど」

床に置いたかぼちゃの前に座り、ちょっとだけいじけモードになった私だった。

「りこ。無理はするな、怪我をするぞ?」
「え……うん。思ってたより硬くて。どうしようかな」

竜体のハクちゃんが私の手からナイフをとり、ぽいっと放り投げた。
投げたナイフが竜帝さんのかぼちゃにサクッと刺さった。
竜帝さんが文句を言ったけれど、ハクちゃんは知らん振りしていた。
あれ?
ずいぶん簡単に刺さった、やっぱりコツ?

「どれ、我が‘お手伝い’をしてやろう」

ふと見ると。
ハクちゃんは自分のかぼちゃの底だけでなく、目・鼻・口も綺麗にくり抜き終わっていた。
私がかぼちゃと格闘している間に……なんて仕事が早い!
彼のかぼちゃは、中身をかき出せば出来上がりですね。
ナイフ、持ってなかったのに。

「ハクちゃん、どうやったの……わっ!?」

ハクちゃんの4本の指のうち1本の爪が、シャキーンと伸びた。

「わあっ……ハクちゃん! すごい、すご~い!」

伸びた爪でまるで柔らかなゼリーように、難なくかぼちゃの底の皮を切ってくれた。
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