四竜帝の大陸【青の大陸編】
かぼちゃでランタンを作るつもりなのだと話をしたら、彼も参加することになった。
カイユさんとダルフェさんがお城を出て今日で11日目。
あと数日で帰ってくるだろうと、ハクちゃんは興味なさそうに言っていた。
カイユさん達がいない間、私とハクちゃんは竜帝さんと過ごす時間がぐんと増えていた。

表情豊かな彼は、笑ったり怒ったり……どんな顔も美しい。
でも。
ふと、寂しげな眼でハクちゃんを見ている時がある。
ハクちゃんは春になったら、黒の竜帝さんの大陸に引っ越さなくてはならない。
ハクちゃんと四竜帝の間には、いろいろな決まりがあるみたいなのだ。
拠点を移すだけでハクちゃん自身の移動は自由だから、全く会えなくなるわけじゃないけれど。
今までのように、いつでも会うことは出来なくなる。
竜帝さんは、自分の大陸から出てはいけないから。

彼が赤ちゃんの頃から、ハクちゃんはこの大陸に居た。
そのハクちゃんが、彼の側からいなくなる。
口では「これで鬼畜じじいの面倒みなくて済んで、せいせいするなぁ~」なんて言ってたけれど。
サファイアのような青い眼からは、彼の本当の気持ちが溢れていた。
 


今日の勉強会は午前中で終わり(シスリアさんは午後から学習院で講義が入っていた)だったので、昼食後に温室で作業に取り掛かった。
竜帝さんは自分の分だけじゃなく、ハクちゃんの分も厨房からもらってきてくれた。

私とハクちゃん、そして竜帝さんの三人でそれぞれかぼちゃのランタン……ジャック・オー・ランタンを作ることになった。
ハクちゃんと竜帝さんにハロウィンやジャック・オー・ランタンについて、一応ざっとは話したけれど。
私自身が詳しくは知らなかったのでハロウィンの説明は、非常に適当なものになってしまった。

私の住んでいた国に最近入ってきた外国の秋の行事で、かぼちゃで怖い顔のランタンを作り悪い霊やお化けをびっくりさせて追い払うお祭りである……と、あまりに大雑把な説明をした私に竜帝さんが言った。

「つまり魔除けの祭りか? ははっ……おちびにはおっかねぇじじいがくっついてるから、どんな魔物だって怖がって近寄らねぇと思うぞ」

あまりに美しい女神様の笑顔は、まるで後光がさしているかのように眩しくて。
思わず拝んでしまいそうになり。
ハクちゃんとの決まりで、竜帝さんと私は2ミテ離れてて良かったとつくづく思った。
   
< 436 / 807 >

この作品をシェア

pagetop