四竜帝の大陸【青の大陸編】
「赤子も子供も……老人も、全ての男を<処分>する。貴女は我のつがい。この身体は……心も全て我だけのものだっ! ……他の者には渡さないっ」
 
処分?  
 
「男を殺し尽くせば人間は絶えるが、我は一向にかまわん。竜族を残せば良い。りこは何も心配いらぬ。茶も菓子も、花も衣装も溢れるほどに竜帝共に用意させよう」

人間が……絶える?

「我が留守の間、カイユ等と待っていてくれ。あの幼生と遊んでおればいい……四大陸全ての男を殺し尽くすには、我とて数日はかかるのでな」

ハクは私を抱き上げて、ソファーに座った。
私を自分の膝に座らせ、乱れてしまった私の髪を手で梳き……撫でた。
まるでお人形を可愛がる小さな子供のように、満足げな笑みを浮かべていた。

「うむ、良い考えだな。我は少々賢くなったのだ……りこのおかげでな」

この表情は、違う。
彼は【笑って】はいない。
逆。
これは、支店の屋上で見た‘貴方’だ。

「あ……なに言っ……」

ハクは冗談を言ったりしない。
本気だ。
これは本気で言っている。
この人には、それを実行する力がある。
 
「だっ……駄目っ! や、やめて……誰も殺さないで!」

私の汚い心を隠すための嘘で、たくさんの人が死ぬ?
私のせいで?

「聞いて、ハクっ!お願い……聞いてっ!」

私はハクの胸に、握った両手を押し付けた。
自分の爪が手のひらに食い込むのを感じた。

「言うからっ! もう、隠さないから……言うからっ……!」

言わなきゃ、駄目。
大変なことになる前に、取り返しがつかない事が起こる前に!

「違うの! 子供が欲しかったのはっ……私はっ!」

本当の気持ちを、暴かれた心を。
私は、貴方に差し出すしかない。

「あ……なたを、ハクをっ」

お願い。
嫌いにならないで。

「りこ?」

知られたくなかった、こんな私を。
こんな私だけど、嫌いにならないで!


「ハクを私に縛り付けるために、私には貴方の赤ちゃんが【必要】だったのよ!」


私の髪を撫でていたハクの手が、動きを止めた。 

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