四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこ、りこ! 見てくれ! 上手だろう?」

ハクちゃんが私の眼の前にノートを突き出した。
鉛筆である部分を指し、私に言った。

「‘りこは風呂が好き’と書いてみた。今回はかなりのできばえだ」
「……そ、そう」

私はしずかちゃん?
まぁ、いいか。
毎日、毎回。
必ず長風呂の私は、確かにお風呂が大好きなんだしね。

「うん。さっきのより上手だね」

ハクちゃんは文字の練習に夢中だ。
今までは必要が無かったから筆記用具に触れたことすれなかったそうで、私が四苦八苦しつつ書き取りをしてるのを見て、自分もやってみたくなったみたい。
でも、竜の手でペンを持つのは大変そうで、初めは線をまっすぐ書くことすら危なかった。

最近は文字っぽくなってきてる……すごいぞ、ハクちゃん! 
人類である私はいまだに、文字がみみず状態なのに。
漢字が書けるんだからここの公用語(アルファベットに似てる)だって、いつか書ける!

と、自分を励ましつつ頑張ってるんだけど。
うむむ…状況は芳しくないのでございます。

午後のお勉強タイムが終わり、お茶をまったりいただくこの時が私の楽しみになっている。
私達は離宮(ここに居候中)の中庭で、勉強をやめて午後のティータイムにする事にした。
真っ白な石で作られたテーブルの面子は私とハクちゃん、そして語学の教師をしてくれるセシーさん。

カイユさんはかいがいしく給仕をしてくれている。
一通りの給仕を済ますと、カイユさんも席に着いてくれる。
最初は承知してくれなかったけどハクちゃんが何か言ってくれたらしく、最近は一緒にお茶を飲んでくれるの。
だから、ますますお茶の時間が好きになった。

カイユさん、セシーさんと簡単でたわいも無い会話が出来るこの時間!
女の井戸端会議。
うん、最高!

『セシー、感謝。いっぱい、ありがと』

彼女は大臣と将軍を兼任している。
すごく忙しい身なのに……。

『うふふ。トリィ様の語学を受け持ってる間は、堂々と会議も休めますもの。それに私がいなくたってこの国は機能します。現在は他国との関係も良好ですしね』

あ、ちょっと難しい言葉があってわからなかった。
ハクちゃんに訊こう!

「ね、セシーさんはなんて?」
「仕事をサボりたいからりこを利用してると言っている。だからこの女に恩を感じる必要は無いぞ」

それ、
絶対、違うでしょ? ハクちゃん!
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