四竜帝の大陸【青の大陸編】
「うん! ありがとう、ハクちゃん。あっ、シスリアさん発見! わぁ、妖精さんが踊ってるみたい~可愛い……わわっ! ハクちゃん!?」

私を腕に座らせたまま、ハクちゃんはゆっくりと踊り始めた。
周りの人達はそんな私達を全く気にする様子は無く、それぞれのパートナーとの時間を楽しんでいるようなので私もこれはこれでいいかな~って思った。

少々恥ずかしいけれど。
履きなれていない靴せいか、靴擦れをおこしかけていたのでちょっと助かたかもと……正直、ほっとしてしまった。
カイユさんとダルフェさんは、にこにこしてこちらを見ていた。

良かった。 
これ、怒られるようなマナー違反じゃないってことだよね?
まあ、カイユさん達以外は私とハクちゃんを気にする人達はいないし……。

「<花鎖>切れなかったね、ハクちゃん」

自称とっても丈夫なハクちゃんだけど。

「ああ。りこのおかげで、我は今後も無病で長生きできそうだな」

内臓を吐きそうだとかって言ったり、かけらの涙が出しちゃうし……高齢者な旦那様なんだから、やっぱり病気とか心配だった。
私自身も、元気でいなきゃと強く思う。

心配性で怖がりなハクの前で、病気になったりしたらいけない……元気なりこでいなきゃって。
ハクのために、自分自身のために……。

「ふふっ。私もこれから1年間、元気でハクちゃんと暮らせるわ!」

 ハクちゃんは私の髪に手を伸ばし、<花鎖>の冠に触れた。
 少しずれかかっていたらしいそれを、もとの位置に戻しながら言った。

「もちろんだ。これでりこも、無病息災決定だ」

竜族は生涯ただ一人のつがいしか愛さない。
愛せない。

「来年も再来年も、りこは息災だ。……世界が終わろうともな」

愛しい人への想いを込めて<花鎖>は毎年、編まれる。
 
「ふふっ。世界が終わるなんて、私は嫌よ? これから貴方といっぱいいろんな所に行って、いろんなものを見て……たくさんの素敵な思い出を、私達は作るんだからっ!」
 
それは、まるで。
年に1回だけ見ることができる<赤い糸>のよう。

「では、【世界】を遺そう。……我は貴女の望みのままに」

<花鎖>、それは華やかで甘い。

『想い』の鎖。 


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