四竜帝の大陸【青の大陸編】
シャイタンの王城からセイフォンの皇太子達を積んだ……乗せた馬車の御者台から降りて、濡れた石畳の上に立った。

街道の両脇は、俺の身長の倍はある雪の壁。
シャイタンと帝都を結ぶこの街道は、高い通行料をとるだけのことはある。
一般人の使う物より大きい、貴族用車両が対面通過可能な幅を持った2車線道路。

ここは完璧に除雪されている。
あまりに有名な……通称『金づる街道』。

正式名称は入り口の門(ここで通行料を払う)に書いてあったみたいだが、見なかった。

帝都は湯が豊富なので、真冬でも多くの人間が訪れる。
治安が良いうえに、金持ち共を満足させる高級店も多い。
年間を通して観光地・保養地としての人気が高い。
だが、冬季は高地にある帝都への道中は雪深く険しい。
そのため以前は移動手段として、最高に高額な<籠>を使わねばならなかった。

シャイタンの先代王はそこに目をつけ、この街道を整備した。
専門の術士が練成した固形燃料が一定の間隔で埋め込まれ、雪を溶かしている。
ここを通れば、真冬だろうと馬車で帝都まで行くことができる。
通行料は<籠>の50分の1の金額。
かなり、お得で……数倍危険。

<籠>よりは安い。
しかし、ここの通行料を払えるのかなり裕福な者だけだ。
金持ち限定ゆえに、強盗するにはもってこい。
ま、護衛に返り討ちって事が多いみてぇだが。

俺が手綱を取り、不機嫌なハニーは馬車の屋根に仁王立ちの状態でこの『金づる街道』を通っていたら、予想通り刺客が現れた。

閣下に手傷を負わせた面子だった。
俺達の目的はこいつらであって、馬車にいる‘お荷物’はついでだ。


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