四竜帝の大陸【青の大陸編】
「……ハクちゃん」

私は、膝にいるハクちゃんに声をかけた。

「ハクちゃん。眼を少しの間だけ、瞑っていてくれる? お耳も塞いでいてね」
「分った。これでよいか?」

ハクちゃんは金の眼を閉じて、両手で頭の横を押さえた。
何も訊かないでそうしてくれる、優しい貴方。

口で言わなくても、念話を使わなくても。
私の心を、貴方は感じてくれている。

「ありがとう、ハク」

ハクちゃんのしっかりと閉じた目蓋に感謝のキスをして、膝にいた彼を床に下ろした。
私は立ち上がりカイユさんに向き合って、白い手袋をした両手に触れた。

「カイユ」

強さ。
貴女の強さは。

「はい。トリィ様」
「私を見て」
「……お許しください、トリィ様」

今の貴女の瞳は、私を避けている。

貴女の、とても綺麗な。
胸が締め付けられるほど悲しい水色の瞳は、私を見ない。

「カイユ」

あの時、貴女が言ってくれたように。
私も貴女に、そう言うの。

「私の前では弱くても、いいの……私以外、見てないから。私の前でなら泣いていいのよ、母様」

カイユさんがしてくれたように。
彼女の髪を撫でた。

何度も、何度も。

貴女が私に教えてくれたの。

これは、貴女が……『母様』が教えてくれたのよ?

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