四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ミルミラが絡んでる時のセレスティスには、近寄らないのが一番なんだ。陛下は俺達にあいつを止めろとは<命令>しなかったしな」

するわけないさ。
そんな無理なことを、あの陛下が<命令>するはずがない。

「もうその件はいいですよ。……なんで洗面器で食ってるんすか?」

気になるのは、こっち。
洗面器でパスタ。

フォークじゃなく、箸なのは問題無し。
個人の好みだしな。
けどなぁ、洗面器は有り得ないだろ?

しかもそれは……。
それはどう見ても、この建物の2階にある宿舎の風呂で使っているやつだぁああ~!

「なんでって、皿が無かったからさ。パスタを茹でてから気がついたんだ。昨夜、パスとオフが皿投げ競争して遊んで全部駄目にしたんだとよ。カイユにばれてぶっ飛ばされる前に、ヒンが同じの買ってきてごまかす計画らしいぜ?」

そう言って。
二ングブックは俺の目の前でパスタを勢い良く啜った。

俺は、プロンシェンがエプロンを付けてた理由を悟った。
そして家宝予定のそれを素早く外し、小さく畳んで制服のポケットに押し込んだ訳を身をもって知った。 

ズゴズルズチョッという耳障りな音とともに、パスタが派手に踊り。

はねたトマトソースが、俺の顔と胸部にヒットした。

「……」

箸で食うとフォークのように麺を巻き取れないから、啜ることになる。
だから俺は箸では食わない。

「あ、すまん」

謝りつつ、二ングブックは再び箸でパスタを口元へと運んだ。
ズゴズルズチョッというイラつく音が響く。

そして俺はまた被弾した。
 
「まあまあ、気にするなダッ君。制服は蜥蜴蝶でできてんだから水かけりゃ落ちるんだしよ! ほれ、これ使えよダッ君」

ひよこ頭のおっさんが俺に差し出したのは、どうみても飲みかけの水が入ったグラスだった。

「…………」
「ほら遠慮すんなって、ダッ君」

陛下。
俺がこいつ等を溶液送りにしてもいいっすか?




 


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