四竜帝の大陸【青の大陸編】
「俺の中にあるこの竜珠を姫さんに使ってくれって言ったら、<青>と<赤>が黙りこくっちまって……採決までには至りませんでした」

俺はどの道、長くないから。
この命を。
あの子が、1日でも長く生きるように。

「竜珠が延命に使えるのは、竜のつがいになった人間が長寿になることからも……導師が数百年も生きてるらしいってことでも証明されている」

カイユとジリギエに。
遺したいんだ。

「舅殿」

この世界を。
君達に。

「クロムウェルを生きて……今後も使える状態で帝都に帰してください。あいつが……陛下の為ならなんでもする‘高品質’の術士が必要なんです」

竜族は術式が使えない。
一説では竜族独自の特殊な能力……竜体と人型を持つせいらしい。
その変化に莫大な力が必要なために、術式を使うための力を溜めておくことが出来ないからだといわれているが……。

「おちびちゃんは異界人だ。こっちの人間と全く同じ結果になるかは分らない」

もし、うまくいけば。 
そうすれば、姫さんは死なない。
死なせない。 

「だから、俺で試して欲しいんですよ」
 
姫さんは死ねなくなる。
あの子は捧げられた命を、投げ出すことなど出来ないだろう。

俺は。
俺の愛しい人のために、大切な存在のために。

姫さん、あんたを。

あんたには。

生贄の命を喰らって生かされる地獄を。

「……わかったよ、婿殿。クロムウェルは必ず使える状態で戻す」

あんたには。
地獄を……。

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