四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ダルフェ。<監視者>……<ヴェルヴァイド>の存在を快く思わない者は過去にも、そして現在にも多く存在する。あの人は常に怖れられ疎まれ、憎まれてきた。昔から人間の勇者だか英雄だかか何度も倒そうと、封じようとしたが誰も成功しなかった」
「……導師は旦那を殺して‘世界を救いたい’んですかね? どんだけ阿呆なんだ。くだらねぇ」

ごめん。
ごめんな、姫さん。

「導師が世界を救う? ははっ、まさか! 僕、さっき言ったでしょう? 導師は<監視者>を……<古の白(ヴェルヴァイド)>を手に入れたいんだよ」
「っ……導師って奴は狂ってる」

旦那は、ヴェルヴァイドは。
<ハク>はあんたが側にいなきゃ、駄目なんだ。

「狂ってる……そうかな? その尽きぬ欲望が、人間の進化の原動力なのさ。それを狂気といい、畏れを感じてしまうから……竜族は滅び、この世界には人間が残るんだよ」

この世界には。
姫さんが。

「ダルフェ。僕はもう二度と間違わない、失敗しない。僕の生きる理由は、君と同じだ」
「セレスティス……」

カイユ。
この世界には。

「君の望みは……願いはなんだい?」

<りこ>っていう贄が、必要なんだ。

「言葉にすれば、もう引き返せない。それでも、君は……カイユに愛を誓ったその口で言えるかい?」

アリーリア。
こんな俺を、君は軽蔑するか?

「俺は……愛しい者達が生きるこの世界を、遺す」
 
君が、愛しいから。
一緒に死んでくれるとまで言ってくれた、君を。

俺は君を、裏切る。

< 650 / 807 >

この作品をシェア

pagetop