四竜帝の大陸【青の大陸編】
「分かりました。では、陛下に連絡を……少々お待ちください」

カイユさんの着ているレカサには、ぱっと見は縫い目にしか見えない腰のところにポケットがついていた。
そこから小さな電鏡を取り出し、鏡面をこんこんと中指の爪で数回弾いた。
1分程であちらと繋がったらしく、カイユさんが会話を始めた。

「陛下? ……ええ、そうです。トリィ様のご希望です」

竜帝さんと会話をしているようだけど、私に聞こえるのはカイユさんの声だけ。
前に竜帝さんが使ってた時も相手の声は聞こえなかった。
でも、会話が成立してる。
う~ん、不思議です。

「あの女に……え? あの王宮術士の娘がですか!? ……折り返しご連絡致します」

カイユさんは折り返しって言ったのに。

「あの小娘っ……!」

電鏡を両手でぎゅっと握って割り、シンクへ投げ捨ててしまった。
 
「カッ、カイユ!? どうしたの? ミー・メイちゃんがどうかした?」
「あの王宮術士は厚かましくも、トリィ様と2人だけで話をしたいと……先ほど陛下に、そう申し出たそうです。なんという身の程知らずなっ……!」

嫌悪感と苛立ちを隠さずに言うカイユさんはすごい迫力で、私はなんて言っていいか分からなくなってしまった。

「……ヴェルヴァイド様のご判断は?」

振り向くと、そこに居たのは。
白いレカサを着たハクちゃんだった。

「ハクちゃ……」
「おそろい、だ」

レカサのデザインはアオザイに似ていてシンプルなものなんだけど。
ハクちゃん着ていたのは光沢のある純白、袖と立襟には瀟洒な金細工……まあ、地味とは言えないけれど。
それにしたって、なんでこうなっちゃうのかな……この人って存在自体がド派手なのかな?

前にも思ったんだけど。
なんで貴方は、黒より白のほうが凶悪度&魔王様度がアップになっちゃうの~っ!?

「……ヴェルヴァイド様、本当によろしいのですかっ?! あの王宮術士はっ」

殺気立ったカイユさんの冷たい声を。

「黙れ。口出し無用だ」

それ以上の冷気を帯びた声が遮断した。

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