四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ハクちゃん、行ってくるね」

私とカイユさんは徒歩で竜帝さんの執務室まで行くことになった。
隣接するに応接室でミー・メイちゃんとセシーさんが待っててくれている。
居間のソファーにふんぞり返って、ハクちゃんは言った。

「今日はりこは日課である散歩をしておらぬからな。足腰の機能維持のためには、歩くことはとても良いと本に書いてあったのだ」
「……そ、そうだよね。うん、歩くのは大切だよね」

ハクちゃんって、好感度ゼロ系悪役美形顔からは想像つかない程の健康オタクなのです……。
まあ、情報源がダルフェ文庫ってところが難点ですけれど。

「カイユ。<青>の執務室への道中、<青>の指定したところ以外は使うな。りこ、帰りは我を呼べ。迎えに行く」

あ、ソファーの上に本が一冊……これを読みながら待っててくれるのかな?
「はい。ありがとう、ハクちゃん」
「さあ、トリィ様。カイユと参りましょう」

カイユさんが私へと手を差し出した。

「……ぁ、あのっ」

これは。
お手をどうぞってやつですよね?

いいのかな?
前にハクちゃんは、カイユさんの首を絞めた。
もうあんなことは、嫌。
私がもっと、もっと気をつけなきゃいけない。
私の常識じゃなく、ハクの考えや思いを尊重しなきゃいけない。

「ハクちゃん、カイユと手を繋いでもいい?」

ハクちゃんを見たら、頷いてくれた。

「転ばれるより、マシだ」
「え?」
「祭りの日のように」

主語述語が無くても、彼の言いたいことが私には分かった。
花鎖のお祭りが終わった後。
戻ってきた温室でドレスの裾を踏んでしまい、私は盛大に転んだ。

「ハクちゃん……お願いだからもう忘れてよ、それ!」

間一髪でハクちゃんが首根っこを掴んでくれたけれど。
床に左膝をついたから、内出血して紫色になった。

見た目よりたいしたことなかったみたいで、寝る頃には治ってたけど。
……治るのが早すぎだと感じたけれど。

青痣の消えた膝を嬉しそうに撫でるハクちゃんの姿を見たら、そんなことを気にするのが馬鹿らしくなってしまった。
傷の治りが早いのは、いいことだもの。
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