四竜帝の大陸【青の大陸編】
「とにかく、それ以上は言わないでっ」
「大丈夫なのだ。りこの代わりに、我が言う」

ん?
なんか噛合わない会話……いつのもことだけど。

「りこ」

ハクちゃんはそんな私をひょいっと持ち上げ、脇の下に手を添えた。
彼が立ち上がったので私の両足は床から離れ、ぶら~ん状態になった。

「カイユよ」
「はい」

あぁ、カイユさん。
いらっしゃったんですよね……すぐそばに。
さすが青の竜騎士の団長さん!
気配を消せるって、すごいというか……いつも気を使わせてしまって、ごめんなさい。
バカップルと罵ってくださいませぇえええ~!

「りこは腹が空いたらしいぞ?」

ハクちゃんはカイユさんと向かい合い、そう言った。

「ハクちゃん?」

セレスティスさんのトマトソースをたっぷりかけたパスタで、私はお腹いっぱいなんですが!?

「トリィ様が……空腹?」

カイユさんはハクちゃんの顔を数秒間じ~っと見てから、にっこりと笑った 
「それ、違うと思います。まだまだですわね、ヴェルヴァイド様」
「…………りこ。違うのか?」
「うん、これ以上食べたらお腹痛くなると思う」

この歳で、食べ過ぎで腹痛になったら恥ずかしいよ。
 
「……そうか。我はまだお勉強が足りておらんということか」

ハクちゃんは私を床へ下ろし、一人で居間へと戻っていった。
歩きながら何かぶつぶつ言っていたけれど、ご機嫌が悪くなった感じはしなかった。

「まったく……鈍い方。さあ、お出かけの支度をしましょう、トリィ様。誰かさんのせいで、紅が落ちてしまいましたから。軽く化粧直しをいたしましょうね」
「え~と……はい、カイユ」

ハクちゃんって、やっぱりちょっと鈍いのかもしれない。
妙に鋭いときも、たま~にあるんだけれど……。

でもね、カイユ。
私はハクちゃんのそういうとこも、大好きだったりするんです。
 



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