四竜帝の大陸【青の大陸編】
綺麗に整えられた爪を持つ指先で、額にかかる髪を優美な所作ではらいながらセシーさんは言った。

「お察しの通り、<監視者>が他の竜族同様人型を持っていることも、人間の女性と性交が可能だということももちろん知っていましたわ」

せ。

せいこう?
性交!?

「お、おいセシー! もっと他に言い方ねぇのかよ!? 婚姻関係とか……はぁ~、年増といえ未婚の女がよぉ~。せめてもうちょっと恥らって言えないのかよ?」

竜帝さんの突っ込みに、セシーさんは笑みを深めた。

「ここで恥じらっても一文にもなりませんもの。私の恥じらう姿がご覧になりたいなら、陛下の私室でお見せしてもいいですわ。ふふふ……クロムウェル殿に遠慮なんてなさらないで、チャンスですわよ?」
「ぶっ! 恥じらうお前なんか見たかねぇっ! それに俺様がクロムウェルに遠慮って、なんだよそれ!? 俺様とあいつの関係はただの雇用関係だ!」

竜帝さんは短い足をばたばたと動かし、激しく抗議したけど……え~っと、その焦りようが逆に……。

「あら? クロムウェル殿は青の陛下の愛人なのでしょう?」
「だぁああ! なんでそんなことになってんだよ!?  冗談でもそんなこと言うな!」

背凭れから前のめりに落ちた竜帝さんは、叫びながら藍色のソファーの上でごろごろと転がった。

「冗談なんかじゃありませんわ。色仕掛けでクロムウェル殿をアンデヴァリッド帝国から奪ったという逸話は、あまりに有……」
「それ以上言うなっ! ぎゃぁああああ~! なんで、どこからそんなデマがぁああ~!!」

セシーさんと竜帝さんの微妙なやりとりも、私の耳から耳へと抜けていった。
私の頭の中はお祭り騒ぎで、花火があがっていた。
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