四竜帝の大陸【青の大陸編】

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カイユさんがジリ君を迎えに行き、ここにいるのは私と竜帝さんとセシーさんになった。
竜帝さんは青い爪を持つ指で窓の側にあるソファーを指しながらここに座れと私に言い、その向かいのソファーの背凭れの上に青いおちび竜がちょこんと座った。

セシーさんが車椅子で移動するのを自分が座る前に手伝おうとしたら、はっきりきっぱり断られてしまい……。

「私にお気遣い無用ですわ。さあ、お座りください」
 
彼女はは車椅子の車輪を慣れた様子で操り、話がしやすいように竜帝さんが示したソファーの傍へと移動してくれた。

「……トリィ様。私に訊きたいことってなんですの?」
 
ソファーに座ると同時にセシーさんらしからぬ強張った顔でそう言われ、とても困ってしまった。

「あ、あの」

うう、なにこの微妙な空気!
訊きたい事っていうのは、よくよく考えるとたいした事じゃないというか……。

「ほら、言えよおちび。あんまり時間かけてっと、じじいが痺れ切らしてここへ来ちまうぜ?」

短い足をぷらぷらさせてる竜帝さんはとってもラブリーだった。
でも今はそんな彼に見蕩れている場合じゃないことぐらい、私にも分かっていた。

「あの、セシーさんはハクちゃ……<監視者>が人型になれるってことを、知っていたんですね?」

セイフォンの竜宮でハクちゃんが人型になることを知ってから、ずっとこのことが気になっていた。
これは私には大問題だったけど……わざわざミー・メイちゃんに席を外してもらうような重大で深刻な内容じゃない。
ただ、ちょっと私が恥ずかしいだけで……。
 
「やはり、その件でしたか。ミー・メイを下がらせて正解でしたわ」
「え?」
 セシーさんの言葉は、私が想像していたものとは違った。
 竜族が竜体と人型を持ってるのは、この世界の人にとっては常識なんじゃ……。
 紅茶色の瞳が細められ、なにかを思案するかのように目線を床へと落ちた。

「確かに竜族が人型を持つことは広く知られています。ですが<監視者>について、今の時代の人間はあまり知らないのです。表向きは、ですが」

表情を柔らかなものに変えたセシーさんは、視線を私へと戻した。
金髪に飾られた妖艶な美貌に、笑みが浮かんだ。
その微笑みはどこか意味深で……私は彼女が次に何を言うのか、ちょっとだけ不安になった。
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