四竜帝の大陸【青の大陸編】
緑の眼が冷たい色に変わる。

『わ……私』

本心を。
偽りのない心を……。

『私、ハクちゃんと』

逃げるな、私!
ここで逃げたら、本当に欲しいものを失う!

『ハクちゃんといたい』

私がそばにいるとハクちゃんが駄目になっちゃうのに。
分かってるけど、でも!

『そばに、いたい』

この世界を壊しちゃうかもなのに!

『ハクちゃんが、欲しい』

私は両手で顔を覆った。
だって……醜いから。

世界のことより自分の望みを選んだ私は、汚い人間?
こんな私を必要としてくれるのは、ハクちゃんだけ。

『了解。じゃ、行きましょうか』

ダルフェさんが私の頭をぽんぽんっと軽くはたいた。

『旦那、きっと泣いてますよ? 歳だけいやになるほどとったのに、中身はお子様ですからねぇ。あの方を‘大人’にするのは姫さんなんですから』

大人……私もハクちゃんといたら‘大人’になれる気がする。
二人でなら頑張れるよね?

うん、きっと。 
この世界に落とされた……来た意味はあるはずだよね?


『……ま、姫さんの身体が壊れないことを祈ってますがね』


自分のことで脳内がいっぱいいっぱいだった私は、ダルフェさんが呟くように言った言葉を聞き逃してしまった。 

聞き逃したことがけっこう重要だったってこと、あるんですよね。



< 68 / 807 >

この作品をシェア

pagetop