四竜帝の大陸【青の大陸編】
「変な人間だな。この我に触れたいとは」

すーっと、私から距離をとった竜は首を傾げながらそう言った。
小型犬サイズの竜のそのしぐさは私にとって、悩殺ポーズに等しかった……うん。
あんまり可愛いから私の涙腺と鼻水が、ぴたりと止まる。
思考回路も回復したみたい。
だって、すごいことに気がついたし。

「……もしかして、私の考えてる事が分かっちゃうの? 超能力?」

竜の金の眼が細くなる。

「お前の思考が全て伝わるのではない。我に伝えたいと念じたことのみだ。我はお前の言葉を理解したわけではないし、日本語とやらも喋れん。念話でお前と“喋っているような状態”なのだ」
「え?」

パジャマの袖で顔を拭きながら考えてみた。
むむ。
そういえば、声はしない……聞こえてこない!
だからこの超かわいい子の声質はわからない。
ただ頭で会話の‘意味‘が理解できてるだけって感じ。
本を黙読している感覚に近いかな?

「この我は‘声‘を持たぬからな」
「声がない……。でも念話っていうことができるんだ! まだ小さいのに、凄いね」
「…………我は……まぁ、お前に言う必要は無い」

なんかこの子、小さい竜だけどすっご~く賢い気がする。
ちょっと古風で俺様っぽいけど。
知性の高さは私なんか及ばない感じ。
翼を動かし浮いている、小さな体。
小さいけれど、すごい存在感がある。
動作もかわいい……ううん、優雅で品がある。
高校生から愛用のパジャマに3足980円のスリッパを履いた私には、触ることなど許されない高貴な……。

袖に涙と鼻水も付いてる26歳。
悲しさを通り越して、笑えるかも。


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