四竜帝の大陸【青の大陸編】
「すぐ、戻りますから」
鋳物製のドアは私の力ではびくともしないほど重いけれど、カイユさんは特に気にする様子なく軽やかに押し開けて出て行った。
「さて、と。トリィさん。保管庫から例の品を出してくるから、少し待っててください」
「はい、スキッテルさん……え!?」
カイユさんとジリ君を手を振って見送ったスキッテルさんは作業場から私へ声をかけ、中央に立ち右足でトンっと床を踏んだ。
するとその部分の床板が跳ね上がった。
「驚きました? 床下に保管庫があるんですよ。帝都は治安が良いので普段は使ってないんですが、あれをそこいらに置いておくような度胸は無いのでね。……よいしょっと」
スキッテルさんは開いたそこに頭を突っ込んで、そのままくるりと落ちて……じゃなく、降りた。
「‘あれ’って、ハクちゃんのかけらのことだよね? 度胸って、どういうことかな?」
「臓腑だったものを店に置くのは問題があるからではないか? ここは肉屋ではなく石屋であろう?」
「…………」
臓腑。
肉屋。
え~っと。
それを『お菓子みたいで美味しい!』と食べてる身と致しましては、なんというべきか……返答に困るのです。
「どうしたのだ? そのような顔をして。心配するな、我のかけらは腐敗せねので臭わぬ。りこが身に着けてたとしても、何等問題は無いのだぞ?」
腕を組んで自信満々に言うと、ハクちゃんはソファーから立ち上がり、スキッテルさんの作業場の前へと移動した。
その動きにあわせ真珠色の髪が揺れ、天井にある螺旋状の照明器具の灯りに宝石のように煌めく。
「賞味期限も消費期限も無い。今後も安心して食らうが良い」
漆黒のレカサとの対比が見蕩れるほど幻想的ですらあるのに、その冷たい美貌からは想像出来ないほど天然君な発言……。
「……あ、ありがとう。ハクちゃん」
「うむ」
やっぱり。
オチビ竜の姿じゃなくても、ハクちゃんは可愛らしい人だと改めて思った。
鋳物製のドアは私の力ではびくともしないほど重いけれど、カイユさんは特に気にする様子なく軽やかに押し開けて出て行った。
「さて、と。トリィさん。保管庫から例の品を出してくるから、少し待っててください」
「はい、スキッテルさん……え!?」
カイユさんとジリ君を手を振って見送ったスキッテルさんは作業場から私へ声をかけ、中央に立ち右足でトンっと床を踏んだ。
するとその部分の床板が跳ね上がった。
「驚きました? 床下に保管庫があるんですよ。帝都は治安が良いので普段は使ってないんですが、あれをそこいらに置いておくような度胸は無いのでね。……よいしょっと」
スキッテルさんは開いたそこに頭を突っ込んで、そのままくるりと落ちて……じゃなく、降りた。
「‘あれ’って、ハクちゃんのかけらのことだよね? 度胸って、どういうことかな?」
「臓腑だったものを店に置くのは問題があるからではないか? ここは肉屋ではなく石屋であろう?」
「…………」
臓腑。
肉屋。
え~っと。
それを『お菓子みたいで美味しい!』と食べてる身と致しましては、なんというべきか……返答に困るのです。
「どうしたのだ? そのような顔をして。心配するな、我のかけらは腐敗せねので臭わぬ。りこが身に着けてたとしても、何等問題は無いのだぞ?」
腕を組んで自信満々に言うと、ハクちゃんはソファーから立ち上がり、スキッテルさんの作業場の前へと移動した。
その動きにあわせ真珠色の髪が揺れ、天井にある螺旋状の照明器具の灯りに宝石のように煌めく。
「賞味期限も消費期限も無い。今後も安心して食らうが良い」
漆黒のレカサとの対比が見蕩れるほど幻想的ですらあるのに、その冷たい美貌からは想像出来ないほど天然君な発言……。
「……あ、ありがとう。ハクちゃん」
「うむ」
やっぱり。
オチビ竜の姿じゃなくても、ハクちゃんは可愛らしい人だと改めて思った。