四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ヴェルは興味なくても、俺様……<青の竜帝>としては大問題だ。密輸は絶対に許せない。大陸間貿易は青印商事の稼ぎの大黒柱なんだ! 俺様は俺様で動く! カイユ、バイロイトに連絡をっ」
「陛下……前々から思ってたんですが。青印商事って名前やめて、もっといいのに変えません?」 
「黙れ、ダルフェ。陛下のセンスにケチを付ける気!? バイロイトに連絡する前に、カイユは陛下に確認したいことがあります」
「? なんだよ、カイユ」
「陛下は皇女が帝都に居るのを、ご存知だったのですね?」
「うっ!? えっと、そのっ、カイユ、黙っててすまんっ!」
「カイユはトリィ様に夫の元愛人と面会なんてこと、させたくありません」

腕を組み仁王立ちするカイユに、主である<青の竜帝>が両手を顔の前で合わせて謝っていた。
<黒>が目にしたならば文句どころか、卒倒するやもしれぬが。
我は気にならぬし、ダルフェも苦笑するのみであって声に出して何かを言う様子もない。

「実は謁見申し込みがなん回もあったんだけどよ……いろいろ理由をつけて、ずっと断ってたんだ」
「ヴェルヴァイド様と関係のあった女など……。問答無用で、帝都から追い出してくだされば良かったのに。面倒ですから、今からカイユが殺してきましょうか? 殺すついでに拷問にかければ、魔薬の入手経路も分かって一石二鳥です」

殺すついでに拷問?
カイユよ、ついでの使用方法が少々変なのではないか?

「それは駄目だ、カイユ」

嬉々として言うカイユを、<青>がたしなめた。

「まだ魔薬を使ったと決まったわけじゃねぇし……転移ができたのは、皇女が術士として鍛錬を積んだ成果だってこともあるだろう? とにかく、殺すなんてことは絶対に駄目だ!」

これを甘さととるか、美点とすべきか。
我が『藻』と言ったのを<青>は聞いておったのに、有りもしない『可能性』を口にする。

術士に必要なのは努力ではなく、才能。
昆布は生まれつき昆布であり。
昆布になれぬ藻は、藻のままで朽ちるのだ。
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