四竜帝の大陸【青の大陸編】
「カイユ、あの皇女はヴェルことがすっげぇ好きなんだ……今までの他の女達と違って、ヴェルに会いたくて帝都に乗り込んできて、俺様にライバル宣言するくらい愚かで真っ直ぐな女だ。考えようによっては、いい機会なのかもしれない。ちゃんと別れさせて……先に進ませてやりたい。だってよ、あの皇女は15ん時からヴェルと……嫁にもいかないで、10年間ずっとヴェルだけなんだよ。……だから……」

答えたのはカイユでは無く、緑の瞳を細めたダルフェだった。

「なら、なおさらやめましょうや、陛下。女ってのは、陛下が思っている以上に怖い生き物っすよ? 人間の女と5股で付き合ってたのがばれて揉めた俺が言うんだから、間違いないです。ここは修羅場経験者である俺の意見を……ぶごっ!?」

ダルフェの口には、我の海綿。
カイユが我の手からそれを奪い取り、ダルフェの口に押し込んだのだ。

「黙れ、役立たずがっ! ……5股ってなに!? 後で詳しく話してもらうわよ? ヴェルヴァイド様、新しい海綿を用意いたしますからご心配なく」

カイユは手を伸ばし、ダルフェの口を凝視しつつ後ずさりをした<青>の両手を握った。 

「ひぃっ!? カカカ、カイユッ、俺様はそのっ!」

強引なまでに硬くその手を握り、カイユは笑んだ。
これがりこが褒め称える、透明感のある微笑みという笑みだろうか?
我には透明ではなく、なにやら濃いものに感じられるのだが。

「分かりました、陛下。そうですわね、よくよく考えれば憐れな皇女です。帝都から追い出すなんて、そんな意地の悪いこと言うべきじゃなかったわ……。陛下、明日は皇女を歓迎して差し上げましょう!」

その言葉に、ダルフェと<青>が怪訝な視線をカイユへと送る。

「カイユ?」
「ハニー?」

カイユはいっそう晴れやかな笑顔で、言った。

「ヴェルヴァイド様とトリィ様の仲睦まじい様を見せ付けて、皇女の未練を完膚無きまでに踏み潰して粉砕してやりましょう!」
「げっ!?」
「ぶはぁあっ! ハ……ハハッ、ハニー!? それって、意地の悪いを越えてるって!!」

ダルフェは海綿を勢いよく吐き出し、袖で口を拭いながら言った。

「もうっ、汚いわね。……ふふふっ、新しい恋への後押しと言ってちょうだい」

新しい恋への後押し……後押しした場合、前の恋はどうなるのだろうか?
恋とは後押しすると古いものが押し出され、次々発生するものなのか!? 
我にはよく分からぬな。

我の恋は、後にも先にも一つだけなのだから。
 

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