四竜帝の大陸【青の大陸編】
りこに会わせる前に、我がこれと会う必要がある。

我がりこと共に南棟にてこれを迎えなかったのは、<青>が強く主張し提案した結果であって、我の意思で此処に居たとは言い難い。

「皇女よ」

<青>は皇女が魔薬(ハイドラッガー)を使ったかどうか、徹底的に調べると言っておったが。
我に、これの頭を見ろとは言わなかった。
 
頼みもせず、願わず。
<青>は……ランズゲルグには。
我を使おうという考えが、あれの脳内には全く無いのだ。

「出せ」

ランズゲルグの頭の中を見ずとも、それが分かる。
何故、分かるのか。

何故、我はランズゲルグの提案に従ったのか。
海綿疑惑のあるランズゲルグの脳の思考回路より、我にはそちらのほうが分からない。

我としても、不思議ではある。
が、不快ではないので良いのだ。

「出せ」
「え? あのっ……?」

立ち上がり、皇女は我へと数歩寄った。
皇女の座っていた椅子が我の視界に入り、その脚の彫刻が複雑な球根形の細工を施した珍しい物だと気づいた。

「旦那、それじゃ分かりません。せめて『出せ』じゃなく『見せろ』って言えばいいでしょうに。あのね、皇女様。あんたが持ってきた異界の品を見せろって、この人は言ってるんですよ」

壁に寄りかかるようにして立っていたダルフェが、皇女に歩み寄った。
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