四竜帝の大陸【青の大陸編】
ダルド殿下と会った時のように、温室にテーブルと椅子を準備した。
今回はカイユさんが1人で運び込み、温室の中央部分にあるドーム型の天井の真下にセットした。

前回使ったような大きなテーブルではなく、ティーセットを置くのがやっとなサイズの猫脚のローテーブルだった。
私が手伝えたのは、テーブルの上にガラス製の八重咲きの造花を置くことだけだった。

皇女様なんてセレブな人種をお迎えするのにこれで良いのだろうかと、カイユさんに尋ねると。

---あれは人間の皇女であって、竜族にとっては『皇女』であることに意味などありません。

そう言って、にっこりと笑った。

「……ねぇ、カイユ」

天板が淡いローズピンクの大理石で、透明なガラスでできた花に色が透けてとても綺麗だった。

「どうして竜帝さんは、これを着て皇女様に会えって言ったの?」

今朝、竜帝さんがわざわざ持ってきてくれた、青いドレス。
裾には銀糸で細かな刺繍が施され、肌の露出を最低限に抑えるために長めに作られた袖も裾と同じように丁寧な刺繍で肘部分まで飾られていた。
このドレスの青色は、カイユさんの騎士服と同じ色だった。

「トリィ様がこの色のドレスを着ていれば<青の竜帝>が貴女のことをとても大切にしているのだと、誰が見ても分かるからです。陛下が同席しなくとも第二皇女にはそれが伝わり、第二皇女が帰国すればそのことは父親である王に報告されるでしょう」
「王様に……報告? それって……」

私といる時はいつもレカサを着ているカイユさんも、今日は青い騎士服だった。
そのことにも、意味があるんだろうけど。
騎士服を着て、刀も手袋もしてる……<青の竜騎士団>の団長って立場で、今日は同席するってことなのかな?
  
「政治的な事は、陛下にお任せください。陛下は恋愛問題には全く使えない方ですが、政治家としては優れた面もお持ちですから。……やっぱりもう少し右にしましょう。この位置では陽が当り過ぎます」

カイユさんは薔薇の刺繍が鮮やかに浮かぶ張り布がされたソファーを、片手で軽々と持って右に移動した。
ソファーの位置に合わせて、他のものも動かす……もちろん片手で。
< 740 / 807 >

この作品をシェア

pagetop