四竜帝の大陸【青の大陸編】
「相変わらず、強情ね。誰に似たのかしら?」
「あんたに決まってるでしょうが、母さん」

終末へと駆け出した『世界』を俺達は必死で追い駆け追い着き、その足を止めなくてはならない。
どんな汚い手を使っても、どんなに犠牲を払おうと。

「母さん……もしも姫さんが死んでたら、カイユは今度こそ駄目だよ」
「ダルフェ……」

俺達は分かってる。
救いたいと願うのは、『世界』の全てなんかじゃなく。

「……俺、あんた等の話聞きながら、考えてたんだ……旦那が嘆き狂って世界を失くしてくれたなら、世界を道連れにカイユと心中できるんだなって……カイユが俺だけのものになるかもしれないって」

それは抗いがたい、甘い誘惑。

「俺、心のどこかで姫さんが死んでくれてたらいいのにって……はははっ、俺ってやつは自分勝手で最低な野郎なんだよ」

手を、伸ばしていた。
伝鏡の向こうにいる近くて遠い存在に。

「母さんっ、俺はカイユを愛してる……誰よりも、何よりもっ! でも俺はっ……ジリや母さんや父さんだって愛してる! この想いだって嘘なんかじゃない! だから、母さん……お願いだ。もしもあの子が生きていたら、俺の竜珠(いのち)をっ!!」

それは懺悔ではなく、懇願。
両膝を着き、冷たい伝鏡越しにぬくもりを求める。
震える俺の手に、赤い竜が小さな手を重ねる。

「ダルフェ。ダルフェ……私の可愛いダルフェ。貴方のためなら、母さんはなんだってしてあげる。あの人……ヴェルヴァイドだって、裏切れる」

それはとても小さい手なのに、俺の全てを包み込んでくれるような気がした。

「か……あさん?」
「赤の大陸に戻ってきなさい」
 
世界のためなんてお綺麗な大義なんかじゃなく。

「母さんの所に帰っていらっしゃい、ダルフェ」

愛しい人のためだけに、俺達は前へと突き進む。
 
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