四竜帝の大陸【青の大陸編】
結果としては。
各大陸の竜族総出で姫さんを探すという、なんとも地味で気の遠くなるよな……人間達に知られぬように、秘密裏に行動するということに決まった。

非効率的極まりないことだが、人間側にこの事態を知られることを避けるため探知能力のある術士を雇うこともできない。
陛下を「私の女王様!!」と崇め敬うクロムウェルなら情報の漏洩の可能性は無いが、奴には探査能力が無いので使えない。

もっとも術士を使う案だって、非現実的だ。
術士一人の探知可能範囲は個人差があるが、ある程度の範囲に限られる。
各大陸各国各都市に配置できるほど人数、世界中の術士を掻き集めたって足りない。
術士ってのは、希少な人種だからなぁ。

「はぁ~……お先真っ暗だねぇ」

旦那の様子を確認するため陛下がカイユを伴い退室し、黒の爺さんと黄の超音波娘はそれぞれの補佐官に指示を出すために戻った。
伝鏡の間に残ったのは、俺と……。

「ダルフェ」

<赤の竜帝>が俺を呼んだ。

「なんです? 赤の竜帝陛下」

俺は黒の爺さんが使っていた伝鏡に覆いをかけていた手を止めず、訊いた。

「カイユは大丈夫なの?」

黒の爺さん用の伝鏡の次は、黄の使っていた伝鏡を専用の布で覆った。
黄の伝鏡を旦那が割ったあの時、俺はこんな未来が待っているなんて思いもしなかった。

「ええ、今はまだ大丈夫です」
「貴方は“大丈夫”?」

真紅の瞳が、まっすぐに俺を見た。
色は全く違うのに、それはカイユの瞳と重なった。
ああ、これは。

「……どういう意味です?」

この眼は。
母親が、子を見る時の眼だ。
< 759 / 807 >

この作品をシェア

pagetop