四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ダッ君! パパに会えて嬉しいでしょ!? パパはダッ君に会えてとっても嬉しいよ!」
「え~あ~、まぁ、うん。会えたのは良いんだけどね、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどさ……」

黄色いひよこの着ぐるみは、異様にでかい頭部の前の部分が一部くり貫いてあり、そこから喜色満面のいわゆる“どやがお”の中年親父の顔。

「…………」
「…………」

<黒の竜帝>と<黄の竜帝>の視線が俺に突き刺さるのを感じた。
ふと横を見ると、俺を呼び出した陛下の目にひよこ男が映っていた。
宝石のようなに青い瞳の中央に、阿呆なひよこ男が存在するなど許されない気がした。
こんなところを親友の忘れ形見として陛下を大事にしている舅殿に見られたら……「婿殿、父親の責任とって君が腹を斬りなさいね」と、あの王子様的笑顔で言うに違いない。

「あ~……陛下、そんなにまじまじと見ないでやってください。受けてるって、勘違いしますから」
「え? あ、うん。分かった。え~っと、俺的には大丈夫(・・・)。<黒>と<黄>は?」

基本的に。
四竜帝以外がこの大陸間通話用の大型電鏡を使うことは、禁止されている。
まぁ、竜帝同伴なら可っていうゆる~い決まりがあるんだが、満面の笑顔で手を振る中年親父の隣には<赤の竜帝>の姿は見当たらない。
<赤の竜帝>、俺の知る母親らしからぬ失態だった。

「規則違反をし、申し訳ありません」

深々と頭を下げ、謝罪した。

「……いや。ここでお前に謝られると困る」
「まぁ、うん。あんたも大変よね~、“ダッ君”」

黒い竜と黄色い竜が、それぞれの電鏡の中で同時に言った。
ああ、さっきの視線は同情だったわけですか……ある意味、軽蔑よりきついかなぁ。
ま、親父が懲罰くらうことにならなくて良かった。
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