四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ね、ハクちゃんはどの色が好き? 沢山あるので。色を選びます!」

ハクちゃんは金の眼を細めて言った。

「黒」

え~!?
今着てるのも、黒なのに。
黒いと、いかにも悪役って感じが強くなるのにな。
黒は似合いすぎというか、はまりすぎというか……。

「ハクちゃん、この薄い紫とか可愛いですよ? あと、このベージュも品があって……」
「黒」

私のスカートを掴む指に、力が入ったのが分かる。
むむ。
折れない気だね、ハクちゃん。

人型のハクちゃんも表情がほとんど無いけれど、竜の時と同じで眼が感情を伝えてくれる。
それと、私の服を握る強さ。
むむむ。

「トリィ様。ヴェルヴァイド様は黒をお選びになったでしょう? 私、そう思ったから最初に今の服をお持ちしたんです」

カイユさんが両脇に黒系の衣類をごっそり抱えて、私達の前に現れて言った。

「なんで? 黒?」

私はハクちゃんに、平和的イメチェンをさせたいのですが。

「りこの色だからだ」
「え?」

私の色?

「りこの髪と瞳の色だ。我はりこの色に染まってしまいたいとすら思う」
 まるで恥らうかのように眼を伏せたハクちゃんに、私は言葉が出なかった。

お、乙女ですか!?
なにその、乙女思考~!!

「まぁまぁ、御熱いことですわ! 私はダルフェの馬鹿を迎えに行って参りますから、後は御二人で。ただし、トリィ様に直に触らないで下さいね。わかってますか? お怪我させたくないでしょう?」

無言で頷くハクちゃんに、カイユさんはさらに言った。

「抱きしめたりしたら骨が折れて、内臓破裂です。絶対に駄目です。どうしても接触したい場合、トリィ様から触れてもらって下さいませ。トリィ様!」
「は、はい!」

 カイユさんは真剣な顔で私に「竜の雄の取り扱い」についてアドバイスをくれた。

「いいですか、トリィ様。御自分の身を守るために必要なのは‘飴と鞭’です」

へ?

「毅然とした態度で優位を保ちつつも‘ご褒美’を与えるのをお忘れなく。それと竜の雄はつがいに【お願い】されると大抵の事は叶えようとしてくれますから、【お願い】を上手くお使い下さいね」
「お、お願い?」
「はい。では、失礼致します」 
 
竜の雄の取り扱い。
なんですか、それ!?
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