四竜帝の大陸【青の大陸編】
飴と鞭って。
犬じゃないんだし……。

「ハ、ハクちゃん。今のは……」

しかも本人の前で、言うことじゃないような……。

「カイユの言うことは正しい」

ハクちゃんは私のスカートから手を離し、立ち上がった。
背がすごく高い。
手足も長い。
腰の位置といい、何等身なんだろう?

「りこ」

優美な仕草で膝を付き、目線を合わせてからハクちゃんは言った。

「りこの寵を得るために我はなんでもしてしまう。我がりこに危害を及ぼすことは無いが、我の行動がりこの心を傷つけるやもしれん」

人外の美しさに、その黄金の瞳に私は目を奪われる。

「……我は表情が乏しいだろう? りこに出会うまで【感情】があまり無かったせいか表情を作る機能が動かないというか、動かし方が分からない」

奪われるのは、目だけじゃなくて。
全て。
私の全て……。

「我は【感情】に疎い。りこの感情を察し、行動するにはまだ‘足りない’のだ」

ハクちゃんは私に分かりやすい言葉を選んで、ゆっくりと喋ってくれた。

「だからりこが我を制御する必要がある。我はりこを害する存在になりたくない。だが‘足りない’のだ。りこの望むのがどのような我なのか」

ハクちゃんは竜の時と同じように、首を傾げた。
この姿ですると、なんか……微笑ましい。

表情が無くても。
肌が冷たくても。
好みの顔じゃなくても。

「単語、難しくてよく分からない。ごめんなさい」

見た目が悪役みたいでも。

「やっぱりハクちゃんって、かわゆいね」

両手をにぎにぎし、首を傾げる悪役顔の超絶美形。
ありえないギャップが、私の心を暖かくしてくれる。

「りこ。あのだな、その」

にぎにぎしていた手がぎゅっと握られた。
何かに耐えるように。


「この姿も‘かわゆい‘ならば、人型でも風呂は一緒で……」

「…………はい?」


 お、お風呂?

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