四竜帝の大陸【青の大陸編】
窓から外にふわふわと飛んでいったハクちゃんを見送った私の手を、カイユさんがそっと掴んだ。
カイユさんは綺麗な顔をしかめながら濡れた布で土をふき取り、小瓶の薬を少量ずつかけて指の腹で優しく塗りこめてくれた。

「足のほうからも血液の匂いがしてます。膝も擦り剥いてしまったようですね。まったく、ヴェルヴァイド様ったら何やってるんだか」
「ハクちゃん、悪くないです。私、自分から落ちたの」
「直接では無くても結果的にはお怪我をなさった。つがいに怪我をさせるなんて、竜族の雄として最低ですわ」

手厳しいです、カイユさん。
竜族の女性って強い。

「カイユ。ハクちゃんを怒らないで? ハクちゃんは意外と繊細。かわいそう」

カイユさんは水色の瞳を細め、微笑んだ。

「トリィ様。あの方を‘繊細‘と言うのは、言えるのは世界に貴女様だけです。ヴェルヴァイド様の伴侶がトリィ様のような方で本当に良かった……」

会話しながらも手際良く手当てをしてくれたカイユさんは木箱に薬をしまうと、私の脇にあったハクちゃんの服を手に取った。

「カイユ。ハクちゃんは竜に戻ったの。なぜ?」

慣れた手つきで畳むカイユさんに聞いてみる。

「さぁ。あの方の考えは私などには……。あら?」

カイユさんが服の中から何かを見つけたらしく、片手を入れて動かした。

「何かしら? 真珠?」

彼女の手には、10粒程の白い球体。
見覚えのある小さなそれは……。

「……真珠ちがいます。内臓です」
「は?」

ハクちゃん。
貴方、かなりへこんでますね?

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