四竜帝の大陸【青の大陸編】
ちょっと擦り剥いただけだから……わぁわぁっ?」

瞬きをする間も無く、景色が変わった。
あれ?
寝室?
ベットの上だ。
術式で移動したんだ……。
私の腕の中に、ハクちゃんはいなかった。

「ハクちゃん?」

私の左脇にこんもりとした黒い山。
これ、ハクちゃんが着てた服?
もこもこと中央部分が動き、布の間から白い竜の顔がぴょこんと現れた。

金の眼が私を見て、くるんと回った。
私は重みのある黒い生地から小さな身体を引っ張り出し、自分の膝に座らせた。
あ。
手足……丸めてる。

「カイユがすぐに来る。手当てをしよう」

念話だ。
竜の姿だと、ハクちゃんは声が無い。
私は手の平をハクちゃんに見せた。

「血、止まってる。平気」

ハクちゃんは私の手の平を見て、数回瞬きをした。
小さな手を伸ばし、触れる寸前でギュッと握りこんだ。

「我は……」
「トリィ様!」

カイユさんが部屋に飛び込むように入ってきた。
小ぶりな木箱を抱えている。
私の手を確認してから箱を開け、中から小瓶と包帯を取り出した。

「傷薬を塗りましょう。お手をこちらに」
「傷、軽いです。平気ですよ?」

薬なんて大げさな! 
恥ずかしいっ。

「りこ。手当てを」

ハクちゃんはふわりと浮いて膝から離れ、窓へ近寄り小さな手を器用に使い窓を開けた。
ひんやりした風が室内に入ってきた。ほんのり花の香りがした。

「我は中庭にいる」
「え? ハクちゃん、あの……」
「<青>には手を出さぬ」
「あ、う、うん。ありがとう」

あれ?
え~っと、……あの~。
私がしたさっきの告白は、スルーですか?

姿が竜に戻っているし。
なんか微妙な気分です。
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