リーシュコードにて



「……わかってねーな」



 すると栄治は、呆れたように、諦めたように、肩で息をついた。



 ゆっくりと立ち上がると、床に転がる冷めたタオルを拾い上げる。



「……俺が言いたかったのは、泣きたいなら胸でも借そうか? ってことだよ。

 ほら、そーゆうシーンって、ドラマでよくあるじゃん?



 誠さんが辞めちゃっても、俺は、俺だけはずっとリーシュコードにいるんだからさ。

 先輩もいい加減あきらめて、ちょっとは弟分に弱味見せてよ?」



 そしてからかうようにそう続けると、真っ白な歯を見せて笑ってみせた。



 広げられた両腕の指先が、軽くリズムをつけて玲子を招いている。



< 92 / 200 >

この作品をシェア

pagetop