最後の恋、最高の恋。


「美月っ! 待って!」


涙まじりのお姉ちゃんの声。


「美月ちゃん! 違うんだ!」


さっきと同じ言葉と一緒に、駆け出す足音が追いかけてくるのが分かった。

お姉ちゃんはヒールだから、この足音はきっと坂口さん。

それが分かったからこそ、余計に走る足を速めた。


うしろから聞こえる足音を振り切って、追いつかれないようにわざと人ごみの中に突っ込んで、路地裏をぐちゃぐちゃに走り続ける。


まるで初めて坂口さんに会った日、公園で告白されて逃げ出したあの日に戻ったみたいに、懸命に走っていた。


あの日と違うのは私の気持ち。



私はあの日と違って、彼への気持ちに気付いている。

もう引き返せないくらい彼のことが好きになっていて。




……それでも彼はもう、私を好きなんかじゃない。

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