千年の追憶【完】
自分の想いに気づいてしまった俺は、水菊の事が気になって仕方がなかった。


また泣いているんだろうか。


悲しい思いは、消えただろうか。


水菊の事ばかりが、俺の頭の中を支配した。


どうやら羽琉も、俺と同じような思いを、抱いていたみたいだった。


でも俺は、初めてのこの感情にかなり戸惑っていて、羽琉にまで気が回らなかった。


しばらくの間俺は、水菊を想う自分を持て余していた。


苦しくて、切なくて、愛しくて、悲しくて。


何もかもどうでもいい程に、狂おしく俺を襲う感情。


俺は、どうしてしまったんだ?


今まで、どんなにたくさんの女達に言い寄られても、湧いてこなかった感情だったのに。


< 16 / 203 >

この作品をシェア

pagetop