犬と猫…ときどき、君
「別れた理由、またいつもの?」
隣から聞こえたその声の主に視線を送ると、そこには、さっきとは打って変わって心配そうに私を見上げるマコの姿があった。
「まぁ……ね」
曖昧な笑顔を浮かべる私に、マコも小さく溜め息を吐き出して、
「アイツも、もうちょっと気ぃ遣えっつーの」
ボヤキながら、少し離れた所でカルテに目を通す城戸に視線を送った。
「城戸は関係ないってば」
「関係ないことないと思うんだけど」
「……」
「大体ね、胡桃がこんな非恋愛体質になったのだって、元はと言えば城戸のせいじゃん」
「いや、それは……」
「だって、城戸が“ぶりっ子しーチャン”なんかに――」
その一言に私の心臓はギュッとなって、乱暴に掴まれたような痛みが走る。
「マコ、やめて」
「……ごめん」
「本当に、もう関係ないから」
一瞬反省はしたものの、マコは私の言葉にまだ納得がいかない様子だ。
「ねぇ、胡桃?」
「んー?」
「やっぱりあんたさ、城戸のこと忘れられてないんじゃないの?」
これまで何度も繰り返されてきたその質問に、私は大きな溜息をマコに向かって吐き出し、呆れたように笑った。
「まだそんな事言ってるの? もう何年前の話よ」
「でも……っ」
まだ何かを言いたげなマコだったけれど、
「胡桃先生、第一診察室お願いしまーす!」
その言葉は元気なサチちゃんの声にかき消され、彼女は諦めたように口を閉じた。
「マコ。本当に城戸は関係ないからね! これは私の問題」
「……わかった」
そうだよ。
城戸は関係ない。
だって私は、もう城戸の事は“友達”として見ていて、それ以上の感情なんてあったら、こうしてここで一緒に働くなんてありえない。