犬と猫…ときどき、君

「別に、そうワケじゃない。早く目が覚めただけ」

だけど、素直じゃない私の口をついて出るのは、そんな強がり。

まぁ、素直になれたとしても城戸に話せる内容じゃないしね。


気付かれないらよう溜め息を吐き出した後、ロッカーを開けて着替えを取り出した私は、それを胸元に抱えた。


昔“そういう関係”だったとはいえ、流石に目の前で着替えるわけにはいかないから、城戸と時間がかぶる時、着替えはアニテク部屋でしているんだ。


「煙草吸ってくるから、着替え、ここでどーぞ」

「え?」

私が振り返ったのと同時に、煙草の箱とライターを手に持った城戸が横をスッと通り過ぎる。


「……」

目の前で、パタンと閉まった扉。


結局“ありがとう”も、“ごめん”も言えなかったし。


「はぁー……」

着替える為にニットを捲り上げた私の口から吐き出された溜め息は、昨日から数えて、もう通算何度目になるのかもわからない。


窓の外のドッグランに目を向けると、そこには、ぼんやりと空を眺めながら、煙草をふかす城戸の姿。


眩しそうに目を細めた後、ゆっくりと落とされた城戸の視線と、私のそれがぶつかった。


――その瞬間。

「へ?」

顰められた城戸の表情に、変な声が漏れてしまった。


な、何でしょうか?

つられて、私の眉間にまでシワが寄る。

そんな私に苛立ったように頭を掻いた城戸は、タバコを灰皿に押し付け、徐に立ち上がって、ランから姿を消した。


「どこ行ったんだろう?」

小さく首を傾げ、そんな言葉を口する私の目の前の扉が、カチャリという音と共に開かれる。


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